k_ikiの雑記帳

DTPのこと、創作のことなど、思いつくまま

インキ

インキって、陰気だなぁ。

いくら印刷が斜陽産業だからって。

自虐ネタはさておき。

 

従来、筆記用の彩色剤をインク、印刷用の彩色剤をインキ、と呼び分けてきた。

近年におけるインクジェットプリンターの台頭で、この分類が曖昧になりつつあるけれども、無理に分類するならば筆記用と印刷用の中間がインクジェットと言えるのかも。

現状におけるインクジェットプリンターの役割は校正用、もしくはTシャツやCDラベルなどの特殊印刷用であることが多い。コストがかかりすぎるので、インクジェットで大部数のものを刷ることはあまりない。

なんとなく棲み分けができているためか、印刷業界においてもインクジェットプリンターの彩色剤をインクと呼ぶ。それに対し、オフセット印刷機(輪転機含む)用の彩色剤のことは今でもインキと呼ぶことが多い。

 

インクジェットとオフセット、それぞれインクとインキと呼び分けるのはいいとして、その違いはどこにあるのか。

 

インクジェットのインクは紙に浸透して定着する。

最近のインクジェットは最小単位が何ピコリットルだとか、インクを粒子状にして紙に噴き付けることができる。

しかし、液体であるインクが紙に浸透する仕組みである以上、必ず滲む。

従って、インクジェットのカタログスペックである「解像度○○○○dpi」というのがそのまま仕上がりのきれいさと直結しているとは言い切れないのだ。

特に、インクの発色性・速乾性を考慮したコート紙ではなく、インクジェット非対応の普通紙の場合、せっかくの○ピコリットルもかなり滲んでしまう。もちろん、もともと細かいので滲んでも最終的には満足できる品質で刷り上がる、と言えるのだろうけれども。

また、表現したい色によっては大きく沈む。色によっては転ぶ。

(「沈む」というのは言葉のイメージ通り、暗く濁った感じになること。「転ぶ」というのは色合いが変わってしまうこと)

そうは言っても、技術の進化を続けているインクジェットにおける発色の鮮やかさは侮れないものがある。

 

それに対し、オフセット印刷のインキは、版からブランケット、ブランケットから紙へと転写し、圧力をかけて紙の表面に盛りつけるのだ。

しかし、やはりオフセットにおいても色が沈む。その原因は単純ではないが、先日のエントリ「ドットゲイン」も大きな理由の一つである。

オフセットの真骨頂は部数の多い印刷物を刷ることにある。何部以上の印刷物を多ロットと呼ぶべきかは場合によるので曖昧な言い方になるが、たくさん刷るほど1部あたりのコストを抑えられる。

逆に、小ロット印刷には不向きだ。一日に何種類もの印刷物を刷るためには、版を替え、紙を替え、場合によっては特色インキを使うためにローラーを洗うなどのメンテナンスも必要だ。

そのため印刷予定を組むのが大変で、飛び込みに対応しづらいという側面も否定できない。

刷るためには版が必要なので、小ロットであるほど割高になってしまう。

欠点ばかり論ってしまったが、オフセットの表現力が今でも高品質なのは変わらない。

 

ところで、少部数印刷であればオンデマンド印刷機(現状、トナー式のものが多い)を使うという選択肢もある。実際、印刷会社以外の一般企業にも普及しつつある。

オンデマンド機の主流であるトナー式は乾かす必要がないので、すぐ欲しいという需要に対応しやすい。難点は、グラデーションやベタ塗りの表現がインキ(インク)と比べて苦手なので、表現力はどうしてもインクジェットやオフセットに劣る。

 

新しい動きとしては、近年、あるメーカーから「オフセットを超えるインクジェット」が販売された。少部数に特化した上、オンデマンドの表現力どころかオフセットさえ上回るプリンタ。

しかし、あまり売れているという噂を聞かない。まあ当然かも、オフセット機が二台ほど買えそうな値段だし。

 

印刷会社が印刷で利益を上げる時代は終焉を迎えつつある。

すでに終焉を迎えたと断言する人もいることだろう。

それは事実だと言わざるを得ない。

しかし、紙メディアへの印刷は今後もそう簡単には無くならない。

プロとして、最後までインキの表現力を最大限に生かす仕事を続けたいものだ。

 

 

と、半ば本気、半ば建前の締めくくりをしておいて……

……さーて、WEBや電子出版の勉強しようっと(すでに出遅れ感パネェ)