k_ikiの雑記帳

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日本語文書における句読点

公式な文書ではどう表記するのが正しいのか。
学術論文では? 小説では?
同じ日本語なのに、印刷物の性格によってルールの縛りに温度差があるように感じられる。
 

  • 曰く、横書き文書であれば和欧混植の際の句読点を統一するため、日本語文書であってもカンマとピリオドを使うべし。
  • 曰く、横書きにおける読点はカンマを使うべきだが、句点はあくまでも「。」を使うべし。
  • 曰く、日本語文書である以上、「、」と「。」を使うべし。欧米かぶれ許すまじ。

 
句読点とは違うけれども、感嘆符「!」や疑問符「?」には本来の意味と同時に、文章の終わりという意味を含んでいる。
これらはもともと日本語になかったので、日本語文書に使うべきでないとの議論も、過去には存在した。欧米かぶれ許すまじ、という議論である。
 
ここで、日本語表記における句読点の由来を少し考えてみたい。
日本語文書の場合、中世以前の正式文書は漢文だった。
中世以降、仮名書きや漢字仮名交じりが普及したが、現代のような一文字ずつに区切られる以前の仮名文字は草書体からの発展途上であり、文章の区切りごとに繋がって綴られることが多かった。また、漢字と仮名を交ぜ書きすることにより、読み手が区切りを読み間違えることが少なく、句読点はあまり必要とされていなかった。
文部省が「文法上許容スベキ事項」1905(明治38)年 16条を告示したことにより、それまでの文語文が日常から遠のき、口語文が増え始める。
折しも、日本での活字の使用が増え始めた時期であり、この頃から徐々に句読点が印刷物に現れるようになる。
ところで、句読点とはそもそも、純粋な日本語というより外国語の解読のためのものという性格が強かったように思われる。
 

  • 漢文あるいはその訓読において文章の区切りを明確にするために用いられたもの
  • 欧米の文章に用いられたもの

 
文部省はこの後、1906年に「句読点法」の指針を示そうとしたが、今日に至ってもなお確立していない。
 
さて、日本語の文章では、縦組と横組とで句読点を変えることがある。縦組では「、。」だけであるが、横組では「、。」「,。」「,.」の組合せがある。これは明治時代に日本語の改革が起きたとき以来続いている。
 
テンとマルが使われている日本語文書

  • マスコミ関係
  • 書籍や雑誌

 (規定はないがテンマルが非常に多い。例外もあるが、それぞれの出版物の中では統一されている)
 
カンマとピリオドが使われている日本語文書

  • 理系出版物や論文など

 (大学の担当教授もそのように指導)
※カンマとピリオドなら半角「,」「.」を使うべきだという人も多いいる
 
カンマとマルが使われている日本語文書

  • 教科書・教育機関
  • 公文書

内閣が各省庁の次官宛に発出した通達(下記「参考:」の「公用文作成の要領」を参照)で、現在も有効とされているが、「不便である」との職員の声に応え、自治体によっては規定を緩める条例を採用しているところもある。
  
参考:
「くぎり符号の使い方は、縦書きの場合と同じである。ただし、横書きの場合は『、』を用いず、『,』を用いる。」
(「文部省刊行物表記の基準」1950(昭和25)年 より、後に「国語の書き表し方」と改題)
※国語表記に関する取り組みは、現在は文化庁の担当となっている。
 
「句読点は、横書きでは『,』および『。』を用いる。」
 (「公用文作成の要領」(1952(昭和27)年4月4日内閣甲第16号依命通知)より)
 
「句読点は,『。』(まる)及び『、』(てん)を用いる。」
 (「左横書き文書の作成要領」1959(昭和34)年 自治庁(後の自治省→総務省)より)
 
 
そんなわけで、読点はどこに打つんだ?
とか、日本語文書に疑問符や感嘆符なんか使ったらおかしいんじゃない?
とか、横書きでテンを使うのって変じゃない?
といった議論が今でもあるのだが、明確な縛りが存在しない状態なのだ。
読み手が混乱するような曖昧さを避けるための記号であり、ひとつの書籍・出版物の中では統一されていること。
というのが、いまの段階でのルールだと言えよう。